仮契約のリスクと値引きのカラクリ

仮契約のリスクと値引きのカラクリ

仮契約はいつでも解約ができても違約金がかかります。値引き額が大きい方がお得!ではメーカーの作戦に引っかかってしまいます。なぜ値引きが大きいか?なぜ値引きをするのか?をお話しします。
こだわりふくろう
 

【今日のキーワード】

 仮契約 ・ 当社標準品 ・ 値引き ・ 見栄え  

 

今回は見積書の注意点です。
私が家を建てる人と話をしていて、全く分かっていないなぁと思うワードは、「仮契約」「当社標準品」「値引き」です。この3つの言葉を安易に考えている人が多いように思います。この3つの言葉には特に気を付けてください。

仮契約

「今月中に契約をしていただくと、キャンペーンが適用されて特別割引ができます。とりあえず仮契約をしてもらって、やっぱり嫌だと思ったらいつでも契約を破棄してもらうこともできます。」
こんな言葉で仮契約をしてしまうと大変なことになります。
いくら仮契約と言われても「建築請負契約書」に署名+捺印をしていまうと、民法上は本契約ということになります。
言われたように「いつでも契約を破棄」できたとしても、違約金を払わなければなりません。

違約金は、契約書に記載されている場合は請負金額の数%から10%までが多いようです。また、契約時の手付金(建築請負金額の10%程度)は返金されないと思った方がいいでしょう。
つまり、あなたの都合で契約を破棄する場合に建築請負契約金が2,500万円だとすると・・・、
2,500万円×違約金(3~10%)+2,500万円×手付金(10%)=325~500万円
が契約破棄にかかる最低の費用です。
そこから、契約後にかかった費用を請求される場合もあります。
・打合せ費用
・設計費用
・地盤調査費用
・発注済みの建築部材の費用
・工事費(工事にかかっている場合)
など、契約破棄の状況によってはかなりの金額がかかります。
仮契約は仮の契約だから簡単に破棄できると思わないで、契約する内容と破棄する場合の内容をきちんと理解してから仮契約をしてください。

当社標準品

見積書の中に「当社標準品」とか「弊社推奨品」という言葉があります。
一般の方の受け取り方としては・・・、
・中級品だろう。
・ほとんどの人が採用しているものだろう。
・たぶん、この商品で決めるんだろうな・・・。
という思い込みがほとんどです。
仮に、中級品でほとんどの人が採用している商品でも、あなたにとっては物足りないものかも、オーバースペックのものかもしれません。仕様を変えると割高になったという話もよく聞きます。木にこだわっている住宅メーカーであれば、フローリングはこだわった商品を標準品としているでしょうし、断熱にこだわっている住宅メーカーであれば、断熱性能の高い断熱材を標準品としているでしょう。反対に、ローコストを売りにしている住宅メーカーであれば、標準品をローコストの品物にしている場合もあるでしょう。
つまり、思い込むのではなくきちんと商品を把握したうえで決めた方がより納得のいく家づくりになります。

値引きと掛け率

例をあげてお話しします。
【例】

定価 売り値
A社 100万円 80万円
B社 100万円 60万円

このような場合に、「定価が同じでも、A社よりも値引きが大きいB社にしよう。」
よく聞きますが、そもそもが間違っています。
私の解釈では、A社は80万円で売りたい商品の定価を100万円に設定していて、B社は60万円で売りたい商品の定価を100万円に設定しているだけです。売りたい金額も定価も売る側が決めることです。その商品を買うか買わないかはあなたが決めることです。
A社の場合は、定価100万円×80%=売り値80万円、この80%を掛け率といいます。
B社の場合は、掛け率が60%になります。
つまり、掛け率の設定の仕方によって、定価から少し下げただけの商品なのか、大はばに下げた商品なのかという「見栄え」が違ってきます。
特に建築では、建材メーカーによって掛け率の設定の仕方は変わってきますし、同じ建材メーカーでも商品によって掛け率は変わってきます。

では、なぜこんなややこしい掛け率というものがあるのでしょうか?
私の考えでは、答えは2つあります。

1.値引き感

先ほどの問題でB社にした人はB社の作戦に引っかかっています。
「定価 - 売り値」で差額が大きいほど、お得感がするのではないでしょうか?

2.経費削減

建材メーカーは、商品を売るためにカタログを作ります。その中に定価も掲載します。特に、新型コロナウイルスが発生した2019年以降、掛け率は建材メーカーにとって非常に便利なものです。
詳しくお話しします。
カタログに定価100万円と表示して60万円で売っていたけど、新型コロナウイルスの影響で70万円で売りたくなった。その後、原油価格の高騰がおきて80万円で売りたくなった。定価=売値であれば、70万円で売るときと80万円で売るときの2回カタログを作り直さなければなりませんが、A社は掛け率を変更するだけでカタログを作り直す費用は掛かりません。経費の削減のためです。

値引きのポイント3

①いい値引き

決算セールや売り上げ目標クリアのための値引きです。住宅メーカー側の都合で利益を減らしてでも受注したいときの値引きで、家を建てる側にとってはデメリットが無い値引きです。

②悪い値引き

お得感を演出した値引きです。
例えば、3,000万円で契約したい場合には先程の定価のお話と同じで、見積り金額を3,000万円よりも高くして値引きを演出する方法です。お見積金額が3,500万円なのに、3,000万円で契約ができたら得した気分になるしょう!

③どちらでもない値引き

人気のないプランで大幅な値引きがある場合があります。この場合は、自分が気に入れば①の良い値引きになりますし、納得していないのに値引きの金額だけで契約をしてしまうと、後悔することになり②の悪い値引きにもなってしまいます。

さいごに

大事なことは、複数社(3社程度)に住宅メーカーをしぼって、見積りを出してもらい、そこからよく考えて比較検討をして契約をすることです。ここで比較検討をきちんとできると思われる人は次回からの「プラン提案型」の見積りをしてもいいと思いますが、自信が無い人は5回目にお話する内容を比較しなくてもいい「プラン統一型」の見積りがおすすめです。

 

こだわりふくろう
 

今回は見積りの大まかな注意点をお話ししました。次回は細かな注意点のお話です。